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冬の薬膳
季節は廻り、いよいよ冬本番。寒さと冷えが気になる季節となりました。冷えは、単に寒いだけではなく不調の原因になります。例えば、首肩コリがつらくなる、免疫力が低下してかぜをひきやすくなる、内臓が冷えて消化不良や下痢を引き起こすなど。生理痛や生理不順といった女性特有の悩みの奥にも、冷えの存在が多くみられます。
冷え対策で意識したいのは、体の内側、深部を温めること。なぜなら、体の深部には、生命活動に重要な内臓があり、体温調節機能は末端より深部体温の維持を優先させるからです。深部がしっかり温まれば、血流によって熱がすみずみに伝わり、手足の末端まで温まってきます。そのために有効なのは、筋トレやウォーキングで体を動かすこと、湯船につかって体をじっくり温めることなど。日々の食事に温め作用のある食材を取り入れることも、内側からの冷え予防に大いに役立ちます。
東洋医学に基づく薬膳には、「五気・六味」という考え方があります。五気とは、熱・温・平・涼・寒のこと。体を温めるか冷やすか、どちらでもないかという食材の性質のことです。六味とは、酸・苦・甘・辛・鹹(塩辛い)・淡(無味)の六つの味のこと。それぞれの味には、舌で感じる味だけでなく体にもたらす機能があると考えます。
寒い冬に取り入れたいのは、体を温める温性、熱性の食材と、ピリ辛の辛味がある食材。辛味には気血の流れを促して体を温める作用があるのです。辛いキムチ鍋を食べると、体が芯からポカポカしてきますよね。これがまさに、「温」と「辛」の効果。唐辛子やニラ、胡椒など、温め作用のある辛味食材はいろいろありますが、中でもおすすめしたいのが温活食材の代表格、ショウガです。
薬膳で、ショウガはとても有用な食材。生のショウガは体を温め、発汗させることで引き始めのかぜに対処したり、冷えなどによる吐き気をケアしたりする効果が期待できます。さらに、加熱、乾燥させることによりショウガのもつ温める力は大幅に増加。生のショウガが主に体表を温めるのに対し、加熱・乾燥させたショウガは胃腸をはじめ体の深部を温めてくれます。
漢方では、乾燥させたショウガを「生姜(しょうきょう)」、加熱してから乾燥させたショウガを「乾姜(かんきょう)」といいます。乾姜が配合されているのは、「人参湯」「半夏瀉心湯」「大建中湯」など、冷えによる腹痛や下痢を治療する薬。このことからも、深部の冷えを予防したい冬の温活には、加熱、乾燥させたショウガがよいことがわかりますね。
工夫次第で温めパワーが格段にアップするショウガの力。ぜひ冬の食養生に活かしていきましょう。
加熱と乾燥の加工を取り入れて作るのが、昔ながらのお菓子「生姜糖」。1枚食べれば、ピリリとした辛味とともに体がほっこり温まります。煮汁の「生姜シロップ」は、紅茶やほうじ茶に入れるほか料理の調味料としても活用できます。

生姜糖は密閉予期に入れ冷暗所で1か月ほど保存がききます。生姜シロップは清潔なガラス瓶に入れて冷蔵庫で保存。1か月ほどで使い切ってください。
監修/渡邉賀子先生(帯山中央病院理事長、漢方専門医)
文・レシピ紹介/岡尾知子(「みんなの漢方」理事・国際薬膳師・鍼灸師)
岡尾知子理事の著書『はじめての薬膳生活』『からだがよろこぶ野菜の事典と薬膳レシピ』(ともに法研)が好評発売中です。毎日の食事から健康づくりを目指す食養生のヒントに、ぜひお役立てください。

