[春]花の季節に/筋肉の緊張を緩めるシャクヤク(芍薬)

春 Spring 花の季節に

花に癒やされるだけではない植物の力

花に癒やされるだけではない植物の力
注:生薬として使われるのはシャクヤクの根を乾燥させたもの

春の終わりから初夏にかけ咲くシャクヤク

四季のある日本ですが、「やっと巡ってきた」と最も喜ばれるのは「春」ではないでしょうか。厳しい寒さが緩み、色淡い桜が咲き始めると、晴れやかな気持ちになってきます。徐々にさまざまな花が色鮮やかに咲きつなぐ季節は、私たちに新たなエネルギーを注入してくれるようです。
そうして始まる新年度。新しい学校や職場、役割などに、いつもより緊張の日々を過ごし、心身に疲れを感じ始める5月から6月頃に咲くのが、シャクヤク(芍薬)です。

「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」は女性に対する生薬の使い方?!

シャクヤクといえば、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」という都々逸が有名です。女性の美しい姿の形容として知られていますが、女性に対する生薬の使い方を表したものだという説があります。
この3つは、シャクヤク、ボタンビ(牡丹皮)、ビャクゴウ(百合)という生薬でもあり、

  • 立てば⇒イライラして気が立っている女性にはシャクヤクの鎮静作用を
  • 座れば⇒座って腹部の血流が悪いお血の女性にはボタンビで血を巡らせ
  • 歩く姿は⇒ナヨナヨして安定せず歩いている女性にはビャクゴウの精神安定作用を

という処方を示していると聞くと、作者不詳のこの都々逸に一層興味を引かれます。

腹痛や腰痛、筋肉痛、こむらがえりなどに

根の部分を乾燥させたシャクヤクの生薬は、甘草、生姜に次いで、一般用漢方処方に多用されています。痛みを抑え、筋肉の緊張を緩めるなどの作用があり、腹痛や腰痛、筋肉痛、こむらがえりなどに用いられます。また、月経不順や月経痛、更年期症状の緩和など婦人科系の不調改善にも使われます。
世界最古の観賞用植物(紀元前5世紀の記録)として広く長く人々に愛でられている「花」、生薬となって健康に貢献する「根」。美しくも頼もしい、シャクヤクです。

漢方薬に使われているシャクヤク(芍薬)

◎配合される主な漢方処方は…

こむら返りなど四肢の筋肉痛や痙攣を改善する効果:

  • 芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう)

腹痛を改善する効果:

  • 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
  • 小建中湯(しょうけんちゅうとう)

貧血や月経不順など血虚を改善する効果:

  • 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
  • 四物湯(しもつとう)

などです。

監修/渡邉賀子先生(帯山中央病院理事長、漢方専門医)
執筆/坂本ミオ(CSプランニング、医療ライター)

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