漢方Q&A
漢方専門医の渡邉賀子・医療法人祐基会 帯山中央病院理事長に聞きました
- そもそも漢方薬ってどんなものですか?
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西洋医学的に病気ととらえにくい症状も得意。同じ症状でも異なる漢方薬が処方されることも
西洋医学は、原因がはっきりしている病気への治療が得意なのに対し、漢方医学は、西洋医学では病気とはみなされないような不調対策も得意分野です。西洋医学では同じ病気なら同じ薬が使われることが多いのですが、漢方医学では「証」(ひとりひとりの体質や病気の進行度など)の診断により漢方薬を処方します。そのため同じ症状でも人によって違う漢方薬が処方されることがよくあります。ですから、医師に正しく診断してもらうことが大切です。
- 漢方薬は何からできていますか?
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植物など自然の生薬を組み合わせてつくられています
漢方薬は、自然界にある植物を中心に、動物由来のものや鉱物などを原料にした生薬を複数くみ合わせた薬です。古くから、生薬を細かく刻んで混ぜたものを煎じて飲むという形がありますが、現在、多くの病院で処方される漢方薬は”エキス顆粒製剤”。これは、煎じた液を濃縮、乾燥させ、顆粒に加工して飲みやすくしたものです。
- 漢方薬はどんな症状や病気に使われるのですか?
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検査で異常なしといわれる不調や体質的なものにも使われます
西洋医学的に有効な治療法が少ない病気や、検査では異常なしといわれる症状や不調にも漢方薬が使われることが多く、月経に伴って起こる不調やアレルギーなどの体質的なもの、メンタルや皮膚の症状にも効果的です。たとえば、冷え症、肩こり、にきびや吹き出物、月経痛、便秘、むくみ、不眠などにも用いられ、未病の段階の不調改善にも役立ちます。
- 漢方薬にも副作用はありますか? どんな副作用が考えられますか?
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西洋薬に比べると少ないのですが、副作用はあります。医師の指示を守って服用することが大切
漢方薬には副作用がないと思われがちですが、これは間違いです。アレルギー反応のほか、「証」に合わない薬を使ったり、大量に使い過ぎたり、薬の組み合わせが悪かったりすると、湿疹やむくみ・胃痛・下痢などの症状や、肝機能障害や間質性肺炎などが起こる場合があります。漢方薬も薬です。医師の指示を守って、正しく服用するとともに定期的に検査を受けることが大切。必ず、医師や薬剤師に相談してください。
- 漢方薬には健康保険が使えますか?
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基本的に医師の処方による医療用漢方製剤は健康保険が適用されます
現在、日本では148種類の医療用漢方製剤に健康保険が適用されており、日常診療で広く使われています。また、煎じ薬でも健康保険が使えるものがあります。しかし医療機関によっては、自費診療(自由診療)といって、健康保険が使えない場合もありますので、初めに確認してみてください。
- どのくらいの期間、飲むと効くのでしょうか?
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急性の病気なら数時間~数日で、慢性なら1カ月が目安です
漢方薬はゆっくりと時間をかけて効くものと思われがちですが、たとえば風邪などの急性の病気に対して速効性がある場合が多く、数時間~数日で効くこともあります。慢性の症状や病気でも 2週間から1カ月くらいで徐々に効果が表れ、2~3カ月続けることで効果を実感できるケースが多いです。
- 漢方の診療をしてくれる病院はどう探せばいいですか?
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日本東洋医学会、日本臨床漢方医会のホームページで検索し、自分に合った病院を探しましょう
日本東洋医学会、日本臨床漢方医会のホームページで漢方専門医を検索できます。どちらも都道府県別になっており、紹介する医師の「西洋医学の得意分野」や「診療内容」なども記載されています。これらを参考に、自分に合った病院を探すのがいいでしょう。
日本東洋医学会
https://www.jsom.or.jp/universally/index.html
日本臨床漢方医会
https://kampo-ikai.jp/ - 漢方薬はいつまで飲み続ければいいのですか?
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飲み続けている場合は、状態によって主治医に相談を
例えば風邪に対する処方の場合、症状が治まればたとえ1回の服用であってもやめて様子をみて結構です。慢性的な不調や疾患で飲み続けている場合、調子が良い状態が続いているなら主治医に相談してやめてみてもいいでしょう。その後、問題がなければ治療終了になります。気になる症状が出たら受診しましょう。
- いつも飲んでいる漢方薬を変えた方がいい場合がありますか?
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経過をみて医師の判断で薬を変える場合があります
慢性的症状の緩和に向けては、まず2週間ほど飲んで副作用や効果の有無をチェックします。悪い変化がない場合はさらに2週間の計1カ月ほど続けて服用し、効果がなければ医師の判断で薬を変える場合があります。また、本人の体質や症状(「証」)に合う薬は比較的飲みやすく感じられるものですが、いつも飲んでいる漢方薬の味が急に嫌になったり飲みづらく感じられたりしたときは、その薬をやめたり替えたりするタイミングかもしれません。そんなときは主治医に相談してみましょう。
- ほかの薬やサプリメントとの飲み合わせは問題ないのでしょうか?
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「禁忌」や効果に影響を及ぼす恐れがあるものも。お薬手帳を持参しましょう
薬には、ある医薬品を投薬すべきでない場合や、併用してはいけない薬剤が記載されている「禁忌」があります。漢方薬では、インターフェロン製剤を投与中の患者さんなどには投与できないものがあります。また漢方薬同士であっても、異なる診療科で処方された薬によって同じ成分の過剰摂取が起き、むくみや血圧上昇などを引き起こすことも考えられます。必ずお薬手帳を持参し、薬剤師に確認してもらいましょう。サプリメントは、単体で副作用が強く出るものがありますし、薬の効果を必要以上に上げるもの、抑えてしまうものもあります。いろいろなものを自己判断で服用しすぎないようにしましょう。
- 市販の漢方薬を子どもに飲ませても大丈夫ですか?
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医師が処方するのが望ましいです。できない場合は用量に注意を
漢方製剤は小児用量を規定していません。そのため、医師が一人一人の年齢や体格、体質、症状などに合わせて処方することが望ましいです。それができずに市販薬を飲ませる場合は、用量に気を付けましょう。2歳未満は成人用量の1/4以下、4歳以上7歳未満は1/2、7歳以上15歳未満は2/3をおおよその目安としてください。
- 病院で処方される漢方薬とドラッグストアで販売されている漢方薬には違いがありますか?
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生薬の構成は同じですが、有効成分が少ない場合もあります
同じメーカーの同じ薬であれば生薬の構成は同じです。ただ市販薬の中には、副作用の影響など安全性を考え、有効成分の量が少なく設定されているものもあります。
- 「養生」とは、具体的にどういうことを指しますか?
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生活習慣や環境整備などを自分に合った適切なものにすることです
健康を維持し病気を予防するには、日々の生活習慣や環境整備が大事です。食事や運動はもちろん、快適な衣服や居住環境、正しい入浴法や睡眠など生活全般を自分に合った適切なものにすることが「養生」です。いろいろな不調や病気の漢方治療を行う場合、「養生」がその土台となるのです。