診療について
日本人に合うよう発展してきた
日本独自の医学
そもそも「漢方」ってなに?
「漢方」にみなさんはどんなイメージをお持ちですか。「中国伝来?」「西洋医学とは異なる?」といった言葉が浮かんでくる方も多く、曖昧な印象を持つ方も少なくないかもしれません。
日本の「漢方」は、その昔中国から伝わった伝統医学が元になってはいますが、日本の風土や気候、日本人の体質やライフスタイルに合うよう長い時間をかけ改良され、効果や安全性が確かめられた、いわば日本独自の医学と言えます。
西洋医学を視野にいれた漢方医学
今日では日本の西洋医学を学ぶ医学生は、漢方医学教育としてカリキュラムに位置づけられた講義を受けており、多くの医師が日常診療の中で漢方薬を用いています。
日本で漢方薬を処方する医師は、西洋医学を学んだ医師だけです。日常診療の中で西洋薬と同様に、漢方薬も処方しています。さらに西洋医学の医師が日本東洋医学会の認定を受け、漢方専門医として、より深い漢方の知識と技術を身に付け、診療にあたっています。
病態だけでなく、
体質を重んじる漢方
一人一人の体質やタイプなど「証」を診察
西洋医学と漢方医学の診療はどう違うのでしょう?
西洋医学は、検査や診察で原因がはっきりしている病気の治療が得意です。一方、漢方医学は、西洋医学では病気とは見なされないような不調への治療も得意です。
西洋医学では、同じ病名なら同じ薬が処方され、同じ治療が行われます。それに対して、漢方医学では一人一人の体質やタイプ(「証」=下記)や症状の現れ方などを診断して、「証」に合った漢方薬を処方することによって、病気や不調を治すのです。
「証」とは
漢方診療における物差しの一つ。体質や体力、病気に対する抵抗力を表し、
「虚症」「中間症」「実症」の3つに分類されます。
体力がなくやせ型、または水太り。筋肉が弱く、顔が青白くハリがない。胃腸が弱く下痢をしやすい。寒がり。
虚証と実証の中間のタイプ。
体力がある。ガッチリしていて筋肉質。顔色がよく艶がある。暑がりで、胃腸が強く便秘気味。声が大きい。
体を構成する「気血水」の不足や停滞を診る
漢方において、体の状態や体質を判断するための物差しは、ほかにもあります。そのひとつが「気・血・水(き・けつ・すい)」です。漢方医学では、人の体を構成する基本的な要素は気・血・水と考えます。それぞれに不足や滞りがあることによって体のバランスが崩れ、不調を来すと考えられています。
「気血水」とは
「気・血・水」とは漢方における物差しの一つ。
人の体を構成する基本的な要素を
「気」「血」「水」の3つに分けて考えます。
「元気」「気力」「気持ち」の気。気の不調には、「気虚(ききょ)」…無気力やだるさなど、「気滞(きたい)・気うつ」…頭重、息苦しさなど、「気逆(きぎゃく)」…のぼせ、動悸などがある。
全身を巡って栄養を与えるおもに血液のこと。
血の不調には「瘀血(おけつ)」…月経の異常、肩こり、便秘など、「血虚(けっきょ)」…貧血、肌の乾燥などがある。
血液以外の体液。水分代謝や免疫システムにかかわる。水の不調は「水毒(すいどく)・水滞(すいたい)」でむくみ、めまい、頭痛、下痢、排尿異常などがある。
体質やタイプに応じ、同じ症状でも異なる治療
漢方では、上記のような物差しで診療するため、同じ症状であっても人によって異なる漢方薬が処方されることがよくあります。ですから、できるだけ詳しく症状を伝えることが大切です。
また、原因がはっきりしている病気への治療が得意な西洋医学に対して漢方医学は、西洋医学では病気とは見なされないような不調対策も得意とします。